美術館で美術品を見るとき「美術品」だけなく「制作年」に注目してください。
制作年は、解説パネルを見ればすぐわかります。
「へえ、この時代、この年代に作られたものなのか」
「古い作品」と思うだけで終わりそうですが、要チェックのポイントです。
現代アートを除けば、美術品の多くは100年以上前に制作されたものばかりです。
たとえば、印象派の芸術家による絵画は、100年以上前のものばかりです。
100年以上も経過しているにもかかわらず、色鮮やかな色彩が保たれているのは感慨深い。
レンブラントやフェルメールの作品は300年以上前の作品にもかかわらず、現代でも目を見張る美しさを放っています。
美術品によっては、300年前、500年前、もっと古くに制作された美術品も少なくありません。
作品鑑賞に余裕があれば「時間の横軸」という視点もおすすめします。
制作年をチェックしたら、日本史・世界史を思い出しながら、同時期に起こった出来事を思い出してみましょう。
フェルメールの作品『ミルクを注ぐ女』は、1657年の作品とされています。
1657年といえば、当時の日本は江戸初期に当たります。
太平の世が始まり、貨幣経済が浸透し、庶民の暮らしも安定し始めた時期です。
参勤交代で各地の大名が江戸との間を行ったり来たりして、忙しくしていた時期でもあります。
そんな時代に描かれた作品と思うと、いかに古い作品であるか実感しやすくなるでしょう。
また、違った視点が生まれ、面白おかしく楽しめるはずです。
レオナルド・ダ・ビンチの名作『モナ・リザ』は、1503年から1506年の制作とされています。
日本でいうと、戦国時代の初期に当たります。
応仁の乱の後、日本各地で下克上の風潮が高まっていく時期に描かれた作品かと思うと、不思議な感覚に包まれるでしょう。
日本が争いごとばかりしている中、レオナルド・ダ・ビンチは、美しい女性を見ながら絵を描いていたのです。
そんな大昔に制作されたものが、美しい色や形を保ったまま、現代まで生き続けているのです。
「こんな昔に制作されたものなのか!」
「当時見ていた人と同じものを見ている!」
「はるか昔の作品にもかかわらず、今でも美しいのは素晴らしい!」
医学の祖であるヒポクラテスの名言「芸術は長く、人生は短い」を実感できる瞬間です
これは絵画だけでなく、彫刻や工芸でも同じです。
自分が生まれる前のはるか古い作品にもかかわらず、今でも美しく輝き続けているのは感動に値します。
当時見ていた人と同じものを見られるのはありがたいことであり、奇跡的なことです。
古びたところはあるかもしれませんが、それこそが味わいであり、醍醐味です。
長い時間の経過を意識しながら美術品を鑑賞すると、より味わい深くなるでしょう。
美術品だけでなく、制作年にも注目すれば、感動が2倍になるのです。