ただ今、2003年、8月6日、午後6時41分です。
私は、今、スターバックス(コーヒーショップ)にいます。
スターバックスで今日も本の執筆のため、すでに6時間以上も居座り続けています。
店員さんにも、顔を覚えられてしまいました。
いつもここにくるのは、集中ができるからです。
それだけでなく、いろいろな人間模様がうかがえるからでもあります。
これは、つい今しがたあった出来事です。
私の真横にあるテーブルで、ビジネスに関係する何らかの交渉が始まりました。
韓国人と黒人の2人です。
最初は穏やかに話していたのですが、少し時間が経って、状況が変わりました。
韓国人の人が、突然不機嫌になり始めたのです。
声も大きくなっています。
コーヒーショップで喧嘩はいけません。
どうやら金額が思ったより大きいらしく、約束と違うらしいのです。
黒人のほうは、冷静です。
「Don't be upset.(落ち着いて)」と言っています。
真剣な交渉らしく、金額の話だけになっています。
韓国人のほうは、かなり頭にきているようで、マシンガンのように話をしています。
怒鳴るに近いものがあります。
コーヒーショップの店員も、心配のまなざしです。
それでも黒人のほうは、冷静です。
きちんと話をうなずきながら聞いています。
「この黒人、結構やり手だな」と思いました。
30分くらいずっと韓国人はしゃべり続けて、怒りを発散させています。
それでもなお、黒人は至って冷静です。
黒人は話の区切りごとに「なるほど」「そうだね」と、うまく相槌を入れています。
ここまで気になり始めると、本の執筆どころではなく、手を止めて2人の話を聞いていました。
顔はノートパソコンを向いていますが、耳は2人の話に向けられています。
お金の交渉は大切です。
私も「金の切れ目は縁の切れ目」を経験したことがあります。
それだけに、交渉が長引いてしまうのも、無理はないのです。
1時間近く話し合いが続けられました。
話し合いの最後の辺りには、黒人が感謝の一言をきちんと口にしていました。
隣で聞いていた私は、なにより嬉しかったのです。
「Thank you for waiting.(わざわざ時間を取ってくれてありがとう)」
「Sorry for disturbing.(気を悪くさせてしまい申し訳ない)」
こうした相手を配慮する一言があり、話の最中こそ大げさでしたが、終わりは気持ちよく締めくくられていきました。
最後に、黒人のほうから握手を求めました。
そのときも黒人は「サンキュー」と感謝していました。
韓国人のほうはというと、意地でも「ありがとう」と言いません。
2人は解散し、ようやくコーヒーショップは元の静けさに戻りました。
韓国人のほうは、最後の最後まで一言も「ありがとう」を言いませんでした。
それが少し残念でした。
交渉でトラブルがあるのは、よくあることです。
それでもお互いに時間を取ってくれたことに感謝してほしいのです。
いろいろと気を使ってくれたことや話を聞いてくれたことだけでも、感謝することです。
何があっても、最後はありがとうで締めくくることが大切なのです。