私たちの脳には「厄介な癖」があります。
昔を振り返ったとき、ポジティブな出来事とネガティブな出来事のどちらを、よりたくさん覚えているでしょうか。
たいていの人は「ネガティブな出来事のほうをよく覚えている」と答えるでしょう。
別におかしなことではなく、普通のことです。
私たちの脳は、嬉しい出来事や楽しい出来事より、つらい出来事や悲しい出来事をよく覚える傾向があります。
これを心理学の世界では「ネガティビティ・バイアス」といいます。
ネガティブな情報は生存に関わる可能性が高いため、人類が進化する過程で、長く優先的に記憶するよう脳が発達しました。
自分の身を脅かす事柄については深く記憶に残すことで、類似の事象を回避できます。
生ものを食べておなかを壊した経験は、大人になってからも忘れないものですですね。
何十年も前のことであっても、当時の様子を鮮明に思い出せるでしょう。
頭にしっかり記憶することで「次からこれを食べるのは避けよう」と注意でき、危険回避に役立ちます。
私たちの脳は、嫌な出来事に関して驚異的な記憶力を発揮するのです。
もちろんこれはこれで生活に役立つのですが、ちょっと困った側面もあります。
しっかり記憶しているがゆえに、ちょっと油断すると、昔あった嫌なことを思い出してしまうのです。
叱られた出来事、騙された出来事、大失敗をした出来事など。
嫌な出来事は、元気やパワーを奪っていきます。
ひとたび心が沈むと、普段の自分を取り戻すのに時間がかかって大変です。
暗い気持ちを引きずってしまうと、日常生活に支障をきたすこともあります。
ネガティビティ・バイアスは進化の過程で脳に備わった仕組みなので、これを今すぐ変えることはできません。
こうしたことにならないためにも、嫌なことを思い出したときの対処を決めておきましょう。
別のことに意識を向けることなら、対処は何でもかまいません。
できれば元気が出たりテンションが上がったりすることがいいでしょう。
嫌なことを思い出したときの対処を決めていれば、いざ嫌なことを思い出しても怖くありません。
あらかじめ決めていた対処を行うことで、暗い気持ちを吹き飛ばせます。
別のことに意識を向けることで、自然と嫌なことを忘れられ、普段の自分を取り戻せます。
「嫌なことを思い出したときの対処を決めている」という安心感があるだけでも、心が楽になるはずです。