私が中学3年生のころの担任は、岡田先生という男性教師でした。
普段は、優しい先生でしたが、ある日、ひどく叱られたことがありました。
「優しい先生ほど怒るときは怖い」と言いますが、まさにそれです。
学校で最も優しい先生は、怒ると学校で最も怖い先生になります。
その結果、先生と私との間で関係がぎくしゃくしたことがありました。
やはり強く叱られると、暗い雰囲気を引きずってしまいます。
特に強く叱られたときほど、落ち込みも激しくなります。
引きずるのは仕方ない。
しかし、なんと、あることがきっかけで元の関係に戻れました。
その理由とは何か。
何のことはない、先生がいつもどおり私に接してくれたからです。
叱られた私は叱られたことを強く覚えています。
しかし、先生は叱ったことなど忘れてしまったかのように、いつもと変わらず接してきます。
それが、普通です。
ほかの生徒と分け隔てなく、淡々と話しかけてきます。
その雰囲気のおかげで、私も肩の力が抜けました。
知らず知らずのうちに先生といつもの関係に戻れました。
今振り返って考えると、おそらく先生は意図的に普段どおり接するよう心がけていたのでしょう。
ぎくしゃくした雰囲気を引きずらないために、先生なりの心のケアでした。
もちろん先生と生徒の話ではなく、上司と部下でもまったく同じです。
叱るときには、メリハリが大切です。
部下を叱るときは、叱ります。
部下が反省したら、上司はきれいさっぱり忘れます。
忘れてしまったかのように、いつもと変わらず接するように心がけます。
大切なことは「叱った後ほど普段どおり接すること」です。
これに尽きます。
何もなかったかのように接します。
本当は気になっていても、気になっていないふりくらいは見せてください。
叱る側には、そういう芝居も必要です。
叱った側から積極的に働きかけてください。
叱られた側は気持ちが落ち込みがちですから、叱った側こそ普段どおりに話しかけたり接したりするのです。