「自分に勝つ」
「自分に負ける」
ときどき日常で登場する言葉です。
あらためて考えると、不自然な表現です。
戦う場面と言えば、普通は相手がいるはずです。
自分は1人しかいません。
1人しかいないなら、戦いは成立しないはずです。
「自分に勝つ・負ける」という表現はよく聞きますが、曖昧な意味で使っている人も多いのではないでしょうか。
では、あらためて言葉の意味を整理しましょう。
「自分に勝つ・負ける」の意味とは何か。
一言で言うと「誘惑や欲望に打ち勝つか流されるか」の違いです。
日常では、誘惑や欲望に悩まされることがあります。
感情を揺さぶられ、だんだん落ち着かなくなります。
そんなとき、心の中でもう1人の自分が現れ、甘い言葉をささやいてきます。
「少しくらいサボろうよ」
「手抜きをしてもいいよ」
「我慢は体によくない」
「怠けてしまえ」
「誰も見ていないから大丈夫」
怠け心をエスカレートさせるような言葉が、どこからともなく幻聴のように聞こえてきます。
この瞬間です。
もう1人の自分がささやいた甘い言葉に流され、欲望や誘惑に流されてしまう。
欲望や誘惑に負けてしまうと「自分に負けた」と言うことになります。
もう1人の弱い自分に負けてしまったのです。
一方、逆もあります。
もう1人の弱い自分が、甘い言葉をささやいてきても、強い心で振り払います。
「誘惑にも欲望にも負けない!」
「しっかり自分をコントロールする!」
「一度決めたことは、最後までやり遂げる!」
甘い言葉が聞こえてきても関係ありません。
理性と自制心でしっかり振り払います。
自分を厳しく律することができれば、誘惑や欲望を振り払えます。
誘惑や欲望に打ち勝つことができれば「自分に勝てた」と言えます。
つまり、誘惑や欲望に面したとき、流されることを「自分に負ける」と言い、打ち勝つことを「自分に勝つ」と言います。
あなたは今、誘惑や欲望に悩まされているかもしれません。
弱みを刺激されたり、痛いところを突かれたりして、衝動的な感情が呼び起こされることもあるでしょう。
心の中でもう1人のあなたが現れ、甘い言葉をささやいてきたときこそ、大切な場面です。
甘い言葉に流されず、しっかり振り払ってください。
大きく息を吸い、冷静を取り戻しましょう。
「私は今、試されている」と考え、理性と自制心を保ちましょう。
誘惑や欲望が頭から離れないなら、何か別のことをして、気持ちを紛らわせるのも1つの方法です。
自分の弱さに流されないこと、甘えないこと、妥協しないこと。
誘惑や欲望は、流されるものではなく、打ち勝つものです。
誘惑や欲望に打ち勝てば、あなたは「自分に勝った」ということになります。