私が小学生のころの話です。
ある日、学校でいざこざがあり、いらいらして家に帰ったことがありました。
「憎い。悔しい。恨んでやる」
感情を抑えきれず、乱暴な言葉を吐いていました。
そんな私を見ていた祖父が、ある言葉を言いました。
「人を恨めばね、いずれは自分に跳ね返ってくるぞ」
いらいらしていた私には、当時、この言葉の本当の意味が理解できませんでした。
「なぜ自分に跳ね返ってくるのだろうか」
不思議に思い、そのときは軽く流してしまっていました。
言葉の意味を理解するようになったのは、それから数年後、祖父が亡くなった後のことです。
相変わらず人を恨んでいた自分は、あるとき、ふとしたことで気づきます。
人を恨んでいる心の声は、自分しか聞こえていないのです。
あなたにも、こんな経験ありませんか。
むかつくことがあると、つい、何度も繰り返し心の中で叫びますよね。
「あの人、むかつく。悔しい」
口には出して言いませんが、心の中で、そう思います。
魔法の言葉のように、何度も口にしますね。
そうすると、一番疲れるのは誰でもない、自分なのです。
心で思っていることですから、相手の耳に直接聞こえるわけではありません。
聞こえているのは、自分だけです。
「ばか」「死ね」という恨みを感じているのは、実は自分しかいないのです。
人を恨めば恨むほど、自分に跳ね返ってくるとは、このことです。
相手への憎しみは、自分にしか聞こえてこないのです。
損をするのは、自分ばかり。
疲れるのも、自分ばかり。
「なんだ、人を恨んでも、自分に跳ね返っているではないか」
人を恨めば、自分に跳ね返ってくることが、理解できたのでした。
この事実に気づいた私は、以後、もう疲れるから人を憎んだり恨んだりするのはやめようと思いました。
意味がないし、疲れるし、時間も無駄だからです。
何の得にもなりません。
それどころか、自分が余計に損をするばかりだからです。
祖父からの何気ない一言は、大切な人生の教えであったと気づくまでに、長い時間がかかったのでした。