私が学生時代、勉強ができる小笠原さんという友人がいました。
勉強ができると聞けば、ノートはきれいに書かれているのかと連想します。
しかし、実際、小笠原さんのノートの字は、驚くほど汚いものでした。
字は汚いし、図やグラフもめちゃくちゃです。
ノートを借りても、字が読めないので「これなんて読むの?」と聞いたくらいです。
しかし、その人に限らず、勉強ができる人に限って、なぜかノートの字が汚いという共通点があります。
勉強ができない人ほど、清書書きのようにきれいな字で書かれ、図やグラフも定規を使って丁寧に書かれています。
なぜノートが汚いのか、しばらく考えました。
すると「消しゴムを使っていないから」ということがわかりました。
字は汚いし、図やグラフの乱暴さもさることながら、最も汚く見えてしまう原因は消しゴムを使っていないからでした。
字を間違えたところは消しゴムを使わず、横線を引いていました。
ノートに書かれた手書きの図表も、定規を使わず、そのまま手で引いた線なので、線が曲がっていて汚く見えました。
落書きのように、汚い字で書かれたノートでした。
しかし、覚えやすいノートに仕上げるならば、汚い字で書いたノートのほうが、よく覚えられます。
汚い字ほど、ノートを復習したときに、書いたときの感情を再現できるからです。
人間は、喜怒哀楽を伴ったときに、記憶力が増します。
過去の思い出でも、楽しいことやつらいことなど、感情に大きく変化があった出来事をよく覚えています。
字を間違えたり、計算を間違えたりしたところは「しまった! 間違った! 大変だ!」と悔しい気持ちになります。
字を間違えたり、計算でミスしたりしても、消しゴムを使わず横線を引き、間違った内容を後から確認できるようにしておきます。
後から復習したときに、間違えたときの悔しい感情を再現でき、同じ間違いを繰り返さないように強く記憶に刻み込まれます。
もし、間違えた字を消しゴムで消してしまうと、間違えた経緯が見えないので、そのときに感じた感情も再現できなくなります。
だからきれいすぎるノートは、勉強に不適切です。
勉強ができる人ほど、消しゴムは使いません。
だからノートが汚いのです。