あなたは才能という言葉を聞いて、何を連想しますか。
おおよそ、特別なことと思っているのではないでしょうか。
神に選ばれた天性に恵まれた人。
生まれつき、すでに抜きんでた能力を持っている人。
異常に上達が早い人。
素晴らしい技術を持った人。
こうした神の分身であるかのような秀でた能力のことを才能と思っていませんか。
たしかにそうした意味の才能もあるでしょう。
しかし、それは特殊です。
奇抜で、珍しい能力ということであり、いわば「天性の才能」と言われている能力のことです。
ここで言う「才能」という言葉は「天性の才能」ではなく「個性」とも言うべき能力のことを指しています。
才能は、一人一人が必ず持っているものです。
「見つけるもの」であり、ただそれを「生かしきっているかどうか」にすぎないことなのです。
では、その一人一人が見つけるものとは何か。
「好きなこと」です。
才能というのは、最初からあるわけではありません。
ある1つのことに絞り、続けて努力した結果、伸びた能力のことを言うのです。
何でもいいですから、人生の大半を1つのことに集中すれば、誰より抜きんでた能力を身につけることができます。
料理を作るのが下手な人でも、仕事として、毎日料理ばかりを作っていると、必ず料理上手になれます。
いくら車の運転が下手でも、タクシードライバーのように朝から晩まで運転し続けていると、運転がうまくなります。
頭が悪くても、受験勉強の波に立ち向かう学生のように勉強ばかりをしていれば、必ず頭がよくなります。
初めにどうあるかが問題なのではなく「何をどれくらい長く努力し続けることができたか」が最も重要なのです。
ここで、一点補足しておきたいことがあります。
飽きずに長く続けられることに、そうそう出会えるものではありません。
やっていれば必ず飽きるし、刺激がなくなり、つまらなくなります。
それが人間というものです。
料理ばかりやっていても苦痛になるし、運転ばかりしていてもマンネリになり、勉強ばかりやっていてもストレスがたまります。
「だったら何をやっても結局長続きしないから、同じことだ」
そう思ったのではないですか。
たしかにそうです。
何をやっていても、最後には刺激が薄れ、つまらなくなり、さじを投げてしまうでしょう。
人間ですから、当然のことです。
しかし、……、例外が1つだけあるのです。
才能に気づき、磨き、生かしている人は、この例外が当てはまります。
それが「好きなこと」です。
好きなことに関してだけは、唯一自分から努力する必要なく積極的になれ、すればするほど刺激的で面白くなります。
特別に自分をはやし立てなくても、勝手に体が動き始め、やっていてストレスになるどころか、ストレス解消にさえなります。
ほかの作業とは違い疲れにくく、どきどきという気持ちの高揚が加わります。
ですから長続きよりやめられないから、どんどんと上達して、最後には「才能」と呼ばれるほどの能力にまで輝くのです。
どういう能力でも、才能になります。
ただ才能と言われるくらいの力がつくまで、長続きするかどうかの問題なのです。
才能とは、ある努力を長期間にわたって続ければ、誰しも身につけることができてしまいます。
ただし長続きができるというのは、何でもそうであるわけでなく、好きなことでしか長続きがしないと言うことなのです。
才能という能力の糸をほどいて解き明かしていくと「好きなことだった」という原点にたどり着きます。
世に残る偉人たち(エジソン・アインシュタイン)だけでなく、スポーツ選手や学者、会社経営者なども同じです。
初めから特殊な才能があったわけではなく、好きだからこそ長く続けられ、素晴らしい能力にまで磨き上げることができたのです。
私だって同じです。
たくさん本を書き、文章を書いていますが、初めからうまく書く能力があったわけではありません。
「好きなことだからやっていて長く続けたからこうなった」というだけにすぎないのです。
書くためにはたくさんの読書が必要で、それも小さいころから好きであるゆえに、よく本を読んでいたものです。
決して苦痛ではありませんでした。
ただ楽しかったし、もっと続けたいと思うばかりでした。
決して勉強していたわけではなく、活字が好きで読んで理解して物事の真実を知ることが好きでした。
たくさんの本を読んで「遊んでいた」という感覚です。
私としてはまったく勉強している感覚はなく、むしろ遊んでいる感覚であり、疲れたときほど本を読もうとしてしまいます。
実際に本を読んでいると悩みや疲れが消えていき、元気になり、ストレスが解消されます。
だから長続きし、あるレベルにまで能力を引き上げることができたということなのです。
好きなことを子どものように遊んでいれば、嫌でも才能が身につくということです。
あなたの才能も同じことが言えます。
才能を探す前に、まず好きなことを探すことです。
あなたが今、日常生活の中で「好きだ」と思えることを探してみましょう。
「なぜ好きなのか」という理由は考える必要はありません。
好きに理由はなく、やっていてそれが自分に合っているから気持ちよくなれるのです。
初めは上手にできなくても、好きなことであるならばかまいません。
「それは何か意味があるの?」「大したことないじゃん」と他人から言われることでも、あなたが面白いと感じれば、結構です。
長続きしますから、いずれ素晴らしくうまくできるようになります。
「好きなことをする → 長続きする → 上手になる → 才能になる」
1つでも好きだな、やっていて面白いなと感じることがあれば、あなたの才能の原点です。
「こんなこと、大したことないよ」
「別に自慢することでも何でもない」
「人の役に立つことではないよ」
そんな声が聞こえてきそうですが、実際に好きなら関係がないはずです。
意外にあなたが陰でこそこそしていることが、才能の芽なのです。