ある日のこと、水口家にくみ取り業者の人がやってきたとき、印象深い出来事がありました。
くみ取り業者の1人が、仕事の最中、意味ありげな質問をしてきました。
「もしかしてご家族に、糖尿病にかかっている人はいませんか」
実は、祖母が重度の糖尿病だったのです。
母は「なぜわかったんですか」と驚いて聞くと「においでわかるんです」と言いました。
私も1つ屋根の下で暮らしていたので、独特のにおいの実感がありました。
例えて言えば「甘酸っぱいにおい」です。
くみ取り業者の人は、仕事上、数多くの家を回っていくので、においに敏感です。
実は、重度の糖尿病になると、独特の体臭を放ち始めるようになります。
なぜでしょうか。
糖尿病になると、糖分を分解するインスリンが不足します。
食事をして血液の中にたくさん糖があっても、使えない状態になるのです。
そこで代わりに、体にある体脂肪から脂肪酸を取り出して、エネルギーとして使われるようになります。
この代謝の際、副産物として「ケトン体」という物質も発生します。
肝臓では、ケトン体を浄化できません。
ケトン体が混じった血中が体を巡り、汗を通して甘酸っぱいにおいが出てくるメカニズムです。
ちなみににおうのは、汗だけではありません。
口から吐く息、小便や大便まで、独特のにおいが漂うようになります。
糖尿病であるかぎり、体臭も発生し続けてしまう難しい悩みです。
糖尿病による体臭を防ぐためには、朝にもシャワーを浴びたり、こまめに汗を拭いたりして、抑えるようにしましょう。