私は高校時代、体操部でした。
入部したてのころは、もちろん何も大きな技はできません。
最初は簡単な柔軟体操から始まり、少しずつ難しい技に挑戦していくという教え方でした。
顧問の先生が指導をしてくれ、それに沿って、技を磨くという形です。
当時、体操部の顧問であった吉成先生は、いつも私にこう言っていました。
「水口、初めはコントロールを気にするな。
全力でぶつかっていけ。
危なかったら、先生が補助してやる」。
器械体操では、危険が伴う技が数多く存在します。
初めて挑戦する際に、コントロールを意識しすぎると、逆に危険です。
体のコントロールに気が向いてしまい、肝心の勢いが落ちてしまうからです。
勢いを出せ、次にコントロールを意識することです。
最初からコントロールばかりを意識していると、中途半端な勢いになり、危険な体勢での着地になります。
私はこの指導を受け「これは体操だけでなく、勉強も同じだな」と思いました。
学生時代には、全力でぶつかることが大切です。
勉強にしろ、スポーツにしろ、まずは全力から入ることです。
コントロールは、全力でぶつかった後に気にすることです。
初めからコントロールを気にしてしまっていては、自分の力を本当に出し切ることができません。
最初に出るだけの力を出し、自分はこのくらいの限界までパワーが出ることを知ります。
次に、それをコントロールできるように意識を向けることが大切なのです。
出し方を調整したり、タイミングを考えたりすることは、まず自分の全力を出して、知ってからです。