ある日、駅のホームで立っていると、不思議な光景を目にしました。
携帯電話を持ちながら、必死に謝っている男性です。
「すみませんでした。申し訳ございませんでした」と、何度も言っています。
ハンカチで額を押さえながら、頭を大きく下げて、謝っていました。
客観的に見ると、不思議な光景です。
携帯電話ですから、頭を下げて謝っても、相手には見えません。
意味がないように思えます。
おそらく本人も、無意識のうちに、そうしているのでしょう。
しかし、やはり頭を下げたほうがいいのです。
頭を下げる様子は、携帯電話で話している相手に見えなくても、伝わります。
実際に体を動かしながら謝罪することで、気持ちがこもりやすくなるからです。
頭を下げたり腰を曲げたりすれば、自然と声のイントネーションに、気持ちが表れます。
聞いている相手も、相手が頭を下げている様子が、目に浮かんでいることでしょう。
不自然な姿ではありますが、人としては、正しいのです。