私は高校時代、体操部でした。
体操部を選んだ理由はさまざまありましたが、1つは「個人競技だから」という理由でした。
団体で進める競技はメンバーが多くなる分、不安定になる要素が多くあります。
1人が欠けると練習ができない状態になります。
1人がいらいらしていると、他のメンバーにもいらいらが波及することもあります。
メンバーの1人のトラブルが、チーム全体に及ぶことが当たり前です。
団体の規模が大きくなればなるほど、そういう協力しなければいけない要因が増えます。
団体で協力しないと勝利できないのは、自分には不向きだなと思っていました。
私は昔から、1人で淡々と進めるのが好きでした。
そこで、個人競技である体操競技の魅力に引かれて選びました。
自分で自分を律すれば、勝因を自分でコントロールできるというのは大きな魅力でした。
勝因をすべてが自分でコントロールできるというのは、やりがいと責任を感じました。
しかし、実際に体操部に入部してみると、思っていたことと現実は大きく異なることを実感します。
1人で練習を進めるのは、想像以上に難しいです。
誰と争うわけでもなく、誰を気にするわけでもありません。
自分の気が進んだときに、できるところまでやります。
ストレスも小さくて、安易な気持ちに浸れます。
嫌なら、練習をサボればいいだけです。
そうした状態になると、やはり人間ですからいつの間にか楽なほうへと傾いてしまいます。
「まあ、また今度でいいか」
何度そう思って、練習をサボったか数え切れません。
1人が好きだから個人競技を選んだにもかかわらず、逆に団体競技の大切さを感じるのは、まったくもって意外な出来事でした。
個人競技の中にいるからこそ、逆に団体競技の素晴らしい部分が見えました。
みんなと協力しながら進めるというのは、逆に言えば、サボりたくてもサボれなくなるという状況です。
簡単にやめるわけにも、だらだらしたくてもしにくくなります。
だからこそ、心も気持ちも引き締まり、惰性を取り払えます。
団体競技のよさはそこです。
大勢の人がいるがゆえにサボりたくてもサボれなくなり、強制的に気持ちを引き締めざるを得なくなるのです。