飲食店のお手洗いで、ユニークな張り紙を見かけることがあります。
「いつもきれいに使っていただきありがとうございます」と書かれた張り紙です。
文字だけで書かれていることもあれば、頭を下げたキャラクターが一緒に添えられていることもあります。
まだお手洗いを利用する前です。
まだお礼を言われるタイミングではありません。
きれいに使い終わってからお礼を言われるならわかりますが、利用する前にお礼を言われるのは不思議な感じがします。
しかし、悪い気はしません。
「いつもきれいに使っていただき、ありがとうございます」という張り紙があると、きれいに使おうと思います。
最初に感謝されると、その好意や期待に報いたい心理が働きます。
自然と優しい気持ちになり、いつもよりきれいにお手洗いを使いたくなります。
実際この張り紙を貼ったところ、きれいに使う利用者が増えたというデータがあります。
「きれいに使ってください!」と命令されると嫌な感じがします。
「いつもきれいに使っていただき、ありがとうございます」と、先にお礼を言われると嬉しくなります。
人間心理を利用した、面白いアイデアと言えるでしょう。
これは、私たちの日常にも使えるアイデアです。
お礼といえば、親切があってから言うのが一般的です。
これを逆にしてしまいましょう。
親切がなくても、先にお礼を言ってしまうのです。
たとえば初対面で「いつもお世話になっております。ありがとうございます」という紹介をしてみます。
まだ相手から親切をされていなくても、こちらから最初にお礼を言ってしまう。
お礼のフライングスタートです。
会話に少し違和感は出るかもしれませんが、不自然と言うほどでもないでしょう。
少なくとも失礼には当たりません。
お礼を言われた相手は、自然と温かい気持ちになるでしょう。
そして、お礼に報いたい心理が働き、接し方が優しくなってくれるに違いありません。
お礼は親切があってから言うものと思っていないでしょうか。
いいえ、それは先入観です。
常識にとらわれてはいけません。
常識は、あくまで世間一般の分別にすぎません。
「お礼は、親切があってから言うもの」という先入観をなくしてください。
お礼は、親切がある前に言ってもいいのです。
お礼を先に言っておけば、それにふさわしい現実がやってくるでしょう。
お礼を、先に言うか後で言うかの違いですが、人間関係の成り行きに影響します。
親切がなくても、先にお礼を言ってしまう人が親切にされます。
最初にお礼を言うことで、ますますスムーズな人間関係が実現します。