妹の結婚式前日、ささいなトラブルがありました。
妹が嫁に行く前夜ということで、奮発しました。
少し遠出をして、家族全員で格式ある高級レストランで食事をしようという話になりました。
家族全員で最後の晩さんです。
事前に予約をして、家族全員が正装です。
レストランの入り口に噴水があるほどの格式あるレストランであり、厳粛な雰囲気が漂うところでした。
家族全員が揃って食事をする最後ということで、最上級のフルコースをオーダーして、会話を楽しんでいました。
問題は、レストランの食事中のことでした。
父が嬉しそうにワインをオーダーしようとした、そのときです。
母と妹が「運転手はお酒を飲んではダメ」と、同じことを言いました。
自家用車できたため、運転手がお酒を飲むと、車を運転できません。
父はワインを飲みたがっていたのですが、必死に止める母と妹がいました。
正論ではあるのですが、大切な食事のときにお酒が飲めないというのも、悲しいものです。
微妙な空気が流れ、華やかな雰囲気が急に暗くなってしまったのです。
もちろんタクシーを使おうかという話にもなりました。
しかし、自宅までは距離があり、フルコースの食事代より高い値段になるのは確実です。
家族全員がためらいました。
父はワインを飲みたい気持ちをぐっとこらえて、アルコール抜きで食事を終えました。
この一件を、後になって悔やみました。
今思えば、あのとき、お金はかかってもいいからタクシーを使うべきだなと思ったのです。
お金の問題ではありませんでした。
タクシー代を出し惜しんでしまったことで、家族での最後の晩さんが、いい思い出より苦い思い出になってしまったのです。
人生の大切な場面の思い出は、一生涯、残り続けます。
今タイムマシンがあれば、お金をかけてもワインをオーダーして楽しいひとときを過ごすべきだったと、思います。
一生に一度の大切な場面では、やはりお金より思い出です。
苦い思いをした一件でした。