犬のぼけについての研究結果で、ショッキングな内容を目にしたことがあります。
「なぜ犬はぼけるようになったのか」という研究論文でした。
その研究結果によると、実は私たち人間にあるといいます。
「野良犬にぼけは少ない一方、飼われている犬にはぼけが多い」というデータもありました。
たしかに私の知り合いを見ても、犬がぼけた話はよく耳にしますが、ぼけた野良犬がいるという話はあまり聞いたことがありません。
なぜでしょうか。
犬がぼけるようになったのは「人と暮らし始めてから」といわれています。
人と暮らす前の野生だったころは、ぼける犬、つまりぼけたオオカミは皆無でした。
犬がまだ野生だったころは、まさに毎日が命懸けの生活でした。
いつどこで敵がやってくるのかわからないので、鼻を利かせ、耳を研ぎ澄まし、獲物を必死で追いかけ、外敵からは逃げました。
まさに毎日命懸けの生活でした。
死と隣り合わせの緊張感があるゆえに、ぼける暇などなかったのでしょう。
「ぼけてしまう」とは死に直結した事態になるため、頭も耳も鼻も敏感でした。
しかし、人と一緒に生活し始めてから、犬の生活様式は大きく変わりました。
まず、外敵から襲われるという心配がなくなりました。
また、狩りに出かけなくても、じっとしているだけで定期的に餌がもらえます。
飼い主に保護されるため「生きなければいけない。死んでたまるものか」という緊張感が抜けてしまいました。
人間と一緒に暮らすということは、ある程度、社会のルールに従わなければいけないと言うことです。
人の言うことを聞いて、決められたルールに従うのは賢いように思えます。
しかし、見方を変えれば、これほど犬から自由を奪っている姿もありません。
犬は賢いように見えますが、頭の中はあまり活動していません。
犬はロボットのように、決められたルールに従っているだけです。
飼い主に言われたからやっている感じです。
またいつもリードにつながれることで、自由な行動も制限されるため、受ける刺激が大幅に減ってしまったという理由もあります。
こうした行動の制限、緊張感の緩み、ぬるま湯の環境などの理由から、犬がぼけやすくなりました。
なんという皮肉でしょうか。
犬のぼけの原因が人とは考えたくはありませんが、事実です。
犬は悪くなくて、私たちが悪かった。
ちなみに最もぼける確率が高いとされるのは、驚くべきことに「盲導犬」とのことです。
盲導犬といえば、優秀で賢い印象がありますが、現実は違うようです。
人の手によって野生を奪われ、徹底的に型にはめられ、自由を奪われているため、最もぼけが進行しやすいです。
考えさせられる課題です。
犬と一緒に生活するから、人は助けられる。
しかし、人と一緒に生活するから犬はぼける。
これは難しい課題です。
犬とのいい関係を続けていくために、適度な距離感や付き合い方など模索していく必要がありそうです。