「お手」
「お座り」
「待て」
「伏せ」
「来い」
犬に覚えさせたい動きにはいくつか種類があります。
私は犬を飼い、犬に動きを覚えさせようとトレーニングしている最中、ふと、気づいたことがあります。
お手に限っては、なぜか教える前からできる場合が多いです。
何度も練習を重ねた結果できるようになるならわかりますが、まだ何も教えていないのにできる。
生まれて間もない子犬でさえ「お手」と言って飼い主が手を差し出すと、誰から教わったわけでもなく、上手に手を差し出します。
「待て」「伏せ」「来い」などは、できるまでに時間も根気も必要ですが、お手に限っては、初めからできる場合が多いです。
あなたの家で飼っている犬はいかがでしょうか。
どんな犬でも、お手に限ってはよくできます。
なぜでしょうか。
犬は、飼い主の命令に反応しているのではなく、飼い主の手の動きに反応しているからです。
実験してみましょう。
無言で飼い主が手を差し出しても、犬も手を差し出してくることでしょう。
飼い主が手を差し出したとき、犬は飼い主から「遊ぼう」と誘われているものだと感じています。
犬同士がじゃれ合っている様子を思い出しましょう。
いきなりじゃれ合いが始まるわけではなく、たいていどちらかの犬が飛びかかってから始まります。
そのとき、前足を使って、相手にのしかかったり倒したりしようとしているはずです。
このしぐさから、犬同士のじゃれ合いが始まります。
いわば、前足を差し出された瞬間「遊びを始めましょう」という合図と受け取ります。
飼い主が手を差し出したとき、犬が飛びかかってこようとする前足のしぐさに似ているため反応を示し、手を差し出します。
お手は最初からできる場合が多いです。
たとえできなくても、何度か練習すればすぐ覚えてくれます。
さて、この習性を利用して、しつけを始めるときは「お手」から始めるといいでしょう。
飼い主の動きに犬が反応し、犬の動きに飼い主も反応する。
これが飼い主と犬との関係を深めるいい切り口になり、その後のしつけもしやすくなります。
いわば、スポーツの準備体操と思えばいいでしょう。
まず軽くお手から体を慣らして、その後にいろいろしつけを覚えさせていけば、次のしつけも覚えやすくなるに違いありません。
犬も手を差し出されたことで「これから遊びが始まるぞ」と思い、ひときわやる気を出すのです。