「おはよう」
朝の挨拶をして食卓に着くと、テーブルには白いご飯と生卵1つです。
なんという質素なメニューなのでしょう。
水口家では頻繁に目にする朝食の光景でした。
「朝から料理の手抜きですか」と突っ込みを入れましたが、母は「頭にいいから」と言い張ります。
出来立てのご飯に卵をかけて、醤油とうまみ調味料をかけて、よく食べました。
まあ、質素ながらもこれがいける味で、私には好物になっていました。
目玉焼きも頻繁に登場しました。
目玉焼きも、フライパン1つで手軽にできるメニューですね。
これもすぐできる朝食メニューですが、母は「頭にいいから」と、また言い張ります。
冗談なのか本気なのか、そのときはわかりませんでした。
水口家では、朝食には卵が登場しました。
後から知りましたが、母の言っていることは当たっています。
実は、卵には学生にとって大切な効用があります。
卵の「レシチン」という成分です。
黄身の部分に多く含まれています。
レシチンは、別名「脳の栄養素」ともいわれています。
脳の神経伝達物質が増え、細胞同士の情報伝達がスムーズになり、記憶力や集中力の向上が期待できることが確認されています。
認知症の老人に食べさせたところ、症状が改善されたという報告もあります。
手軽な食事だからとはいえ、早合点してはいけません。
手軽ながらも、実は学生である私を気遣ったメニューでした。
そういう母の知恵を、大人になってから気づくのでした。