「私は地獄を見た。私は決してクリミアを忘れない」
「クリミアの天使」「近代看護教育の母」として有名な、フローレンス・ナイチンゲールの言葉です。
ナイチンゲールは看護師として医療改革に尽力した人物として有名ですが、その限りではありません。
あまり知られていませんが、彼女は「統計学の先駆者」でもありました。
彼女は以前から「近代統計学の父」と呼ばれるアドルフ・ケトレーを信奉していました。
彼の影響で数字や統計に興味を持つようになり、優秀な家庭教師から学んでいたといわれています。
ナイチンゲールが、クリミア戦争に従軍した際、野戦病院の衛生状態は地獄絵図のような最悪なものでした。
衛生状態が悪ければ、思うような治療ができません。
「このままではいけない」と思った彼女は、上層部に衛生状態の改善を訴えます。
しかし、頭の固い上層部たちは、なかなか素直に彼女の言葉を信じようとしません。
そこには、まだ女性の地位が低い、19世紀の時代背景もありました。
「女性の言っていることだから信用に値しない」という時代の空気があったのです。
そこで彼女は「ある行動」に出ます。
統計学の手法を用いて情報を整理し、客観的データを持ち出しました。
戦死者の数より、野戦病院の死者数が上回っていること。
入院時の患者の症状と推移、病床の配置、病室の環境など、各情報をわかりやすく整理し、一目でわかるグラフも作成しました。
根拠のある客観的データを示すことで、上層部を説得することに成功し、野戦病院の衛生状態が大きく改善されます。
この取り組みが功を奏して、負傷者の生存率の劇的な向上につながったのです。
誰かを説得するときは、言葉ではうまくいかないこともあるでしょう。
相手が頭の固い人であれば、なおさら難しいはずです。
そんなときは、ナイチンゲールのように「根拠のある客観的データ」を使って説得してください。
具体的な事実を示せば、相手は「NO」と言えなくなります。
データ収集に時間と労力はかかりますが、それだけの恩恵が得られるはずです。
客観的データに勝るものはないのです。