学生から社会へ出たときの大きな違いに「敬語」があります。
敬語の習得には、少し時間がかかります。
慣れれば簡単ですが、少し経験量が必要です。
最初から完璧な敬語を話そうとすると、慣れていないため、話し方が不自然になるでしょう。
たしかにコミュニケーションを円滑に行うことは大切です。
相手のほうが地位が上の場合、敬意を意識したコミュニケーションが必要です。
「敬語」という字は「敬意を払う語」と書きます。
相手に敬意の念を込めて使う言葉が「敬語」です。
しかし、これがそう単純でもありません。
私も20代になってわかったことなのですが、完璧な敬語を話されると、実は結構困ります。
話しにくいのです。
若い人でも、敬語が上手な人がいます。
「どこで、誰に習ったのかな」と思うくらいに上手な人がいますが、実は逆にコミュニケーションが取りにくくなります。
お堅い敬語は、お堅い雰囲気になってしまうのです。
円滑にコミュニケーションすることが、一番大切です。
しかし、敬語そのものが、時には「円滑さ」の障害になってしまうときがあるのです。
そのときです。
「敬語は、本当に難しいなあ」と痛感しました。
話せればよい、という問題ではないのです。
私はアメリカ留学中に、たくさんの大人の人と出会いました。
やはり大人には、敬語で話すのがマナーです。
それで、私が固い敬語で話すときによく言われました。
「そんな固い敬語使ったら、何も話せない」と、言われるのです。
だからとはいえ、砕けた口調で話せば「偉そうだ」と言われます。
私は困りました。
「日本語は、難しいな」と思いました。
そこで、別の大人の人に相談すると「丁寧に話せれば、それでいい」と言われました。
相手に対して、丁寧になる。
それが「丁寧語」です。
初対面の相手に対しては、とりわけ丁寧になることです。
丁寧は、失礼ではありません。
マナーの基本は「相手の気分を害さないこと」です。
たとえ敬語でも、固すぎて相手の気分を害してしまうと、マナー違反になります。
だからこそ、敬語習得の前に、相手に丁寧になる言葉を話せるようになるだけでうまくいきます。
丁寧に話せるようになってから、敬語を使えるようになるのが正しい順番です。
「お話をされたことがおありなのですか」より「お話をされたことがあるのですか」のほうがいいでしょう。
「今日のご予定をお聞かせ願います」より「今日の予定を教えてください」のほうが普通に丁寧な印象を受けます。
「先日は押し付けがましくお伺いし、申し訳ございません」より「先日はずうずうしく尋ねてしまってすみません」でいいのです。
柔らかい丁寧語のおかげで、相手も返事がしやすくなるのです。