執筆者:水口貴博

握り寿司の30の食事マナー

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むやみに符丁ふちょうを言いふらすお客さんは、滑稽に見える。

むやみに符丁を言いふらすお客さんは、滑稽に見える。 | 握り寿司の30の食事マナー

寿司屋で交わされている言葉に耳を傾けると、不思議な単語を聞くことがあります。

「ムラサキをください」

「お愛想、お願い!」

「あがり、ください」

聞き慣れない言葉ですね。

こうした言葉のことを「符丁」といいます。

いわゆる職人の間で交わされる合言葉。

どの業界でも、その業界内でのみ使う独特の言葉遣いがありますが、まさにそれです。

「ムラサキ」は、醤油しょうゆのこと。

「お愛想」は、お勘定のこと。

「あがり」は、お茶のことです。

なぜ、わざわざ言葉を換えるのでしょうか。

面白く表現を変えている理由もありますが、本来の目的は「職人同士の会話の内容を、お客さんに悟られたくないから」です。

職人同士の間で交わされる会話の中には、お客さんの耳に入れるべきではない内容もあります。

「今すぐお客さまにお茶を出しなさい。お醤油を出しなさい。お勘定をしなさい」と大声で言われると、お客さんは驚きますね。

そのため、会話のキーワードになる一部をわざとぼかすことで、お客さんに意味がわからないようにしているのです。

しかし、いくらぼかしているとはいえ、常連客は気づくことがあります。

こうした符丁の意味を悟った人の中には、博識を演じようと、むやみに使いたがる人がいます。

これはあまりよいマナーとは言えません。

知ったかぶりの姿勢のひどくなると、一転して滑稽に見えるでしょう。

お客さんが使いすぎてしまうと、ぼかしている意味がなくなってしまうからです。

あくまで職人同士が使う言葉であって、お客さんが使う言葉ではありません。

職人が使う特殊な言葉は、使わないのが無難です。

「ムラサキ」「あがり」「お愛想」とは言わず「お醤油をください」「お茶をください」「お勘定をお願いします」

という言葉を使うようにしましょう。

握り寿司の食事マナー(20)
  • 符丁は使わず、当たり前の表現を使う。
職人はお客さんからの「おいしいね」という言葉のために、長年の修行を積み重ねている。

握り寿司の30の食事マナー

  1. 握り寿司は、日本の技術大国が生み出した代表的な日本料理。
  2. 寿司屋に向かうのは、舞台に行くのと同じだ。
  3. なぜ、寿司屋のベテラン職人には、頑固な人が多いのか。
  4. 「1貫を一口で食べる」これが握り寿司の粋な食べ方の基本。
  5. ねたとご飯を別々に食べない。
  6. 握り寿司が一口で食べられない人の対処法。
  7. 握り寿司に醤油をつけるときの正式なマナー。
  8. 寿司の軍艦巻き。
    あなたなら、どう醤油をつけますか。
  9. 握り寿司を手で食べるか、箸で食べるか。
    それが問題だ。
  10. 1貫ずつ注文できるお店もある。
  11. 1貫ずつ注文できるということは、幅広く楽しめるということ。
  12. 握ってもらったお寿司は、出てきた瞬間に食べる。
  13. 早い、安い、新鮮で、しかもうまい。
    回転寿司は、最高のファストフード店だ。
  14. 魚のにおいは、嘘をつかない。
  15. わさびの刺激をすぐ抑えたいときの裏技。
  16. 回転寿司で、新鮮な寿司を見分ける方法。
  17. 回転寿司で干からびたネタしか残っていないときの対処法。
  18. 回転寿司で取った皿をレーンに戻すのは、マナー違反。
  19. 「不快になる知識の自慢」と「気分のよい知識の自慢」の違いとは。
  20. むやみに符丁を言いふらすお客さんは、滑稽に見える。
  21. 職人はお客さんからの「おいしいね」という言葉のために、長年の修行を積み重ねている。
  22. 高級握り寿司は、話のネタにもなる。
  23. トロを食べれば、店がわかる。
  24. 初めて向かう寿司屋で、いきなりカウンター席に座るのは危険?
  25. 寿司屋で長居をしすぎない。
  26. 通は、食後の小皿がきれい。
  27. 寿司を味わいたければ、醤油をつけない。
    ベテラン職人の腕にかかれば、魚の生臭さまで取ってしまう。
  28. 握り寿司をよりおいしく食べられる順番。
  29. ちらし寿司は、握り寿司とは食べ方が少し異なる。
  30. 寿司屋のタバコと香水は、作品に泥を塗る行為と変わらない。

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