箸の使い方のタブーは、数多くあります。
特に不快感を与えやすいのが、箸で人を差す行為です。
箸で人を指さすのが相手に失礼なのは、すでにご存じですね。
想像してみましょう。
箸を持ったまま、並べられた料理をぐるぐると迷ってしまうことがありませんか。
「どれを食べようかな」と迷い、ついやってしまいがちですが、マナー違反になります。
盆の奥にある器は、手が届きにくいものです。
そういうとき「そうだ。箸を使おう」とひらめきます。
箸を使えば手の届く範囲が広がるので、箸を使って寄せようとするのです。
食事中、手を休めたいときがあります。
目の前に器があると、箸を器の上に置いてしまおうとすることがあります。
うっかりやってしまいそうですが、これもタブーの1つです。
「カン、カン、カン」
器を叩きながら遊んでいる子どもを見かけました。
響き渡るほど、大きな音でした。
箸の使い方のマナー違反には、必ず理由があります。
外国人には、箸の使い方でタブーがあるのは、前提知識がないと理解が難しいのではないでしょうか。
「箸から箸へと、食べ物を渡してはいけない」
箸で物をつかむときには、手に力を入れる必要があります。
「箸で突き刺せば、力を入れる必要がなくなるので、楽に食べられるのではないか」
そう思う人も多いことでしょう。
一度、箸で取ったものを器に戻すのはNGです。
また、箸が触れた料理を取らずにいるのもよくありません。
箸は口元に触れますから、箸が触れたものは自分のだ液も料理につくということです。
汁気の多い料理をいただく際、箸の先から汁がぽたぽた落ちることがあります。
普通に食べていれば自然となってしまう状態ですが、箸先の汁を落としながら食べるのはよくありません。
ぽたぽた汁が落ちていると、それだけテーブルに落としやすくなるということです。
吸い物は、しばらく時間が経つと、沈殿が目立ちます。
みそや具には重みがあるので、上半分は透明になって水っぽくなり、下半分にみそや具がたまってしまうのです。
さすがに、味わいにも大きな偏りが出てしまいます。
「もしかしたらおいしい料理が、器の底に隠れているかもしれない」
器の上のほうは目で確認できますが、底は見えません。
中身を確かめたくなる気持ちはわかります。
箸が汚れたからとはいえ、味噌汁や茶の中に浸して、箸の汚れを取るのはいけません。
箸の汚れを落としたということは、その汚れは料理に混ざったということです。
味噌汁で洗えば、汁が汚れます。
箸先をかじると、箸の寿命を短くします。
箸先がつぶれてしまっては、もう使えません。
一瞬で終わりです。
箸を持ったままおかわりをするのは、タブーとされています。
和食は、ゆっくりじっくり味わうものです。
箸を持ちながらおかわりするのは、慌てていて落ち着きがない様子にうかがえます。
会話が弾んだときには、手ぶりをしてわかりやすく話そうとすることがあります。
つい、指揮者のように棒を振り回してしまうのです。
指揮者が棒を振り回すのはよくても、食事中、箸を振り回すのはいけません。
私が幼いころ、最も親から叱られたのは、このマナー違反です。
苦い思い出があります。
食事中、なんとなく箸をご飯に突き刺したとき「そういう箸の使い方は絶対にやめなさい!」と、怒った口調で注意されたものです。
おなかがすいていると、がつがつとした勢いのある食べ方をしてしまいがちです。
よく漫画では見られる風景ですね。
たしかにそばで見ていると、おいしそうに食べているように見えます。
箸を使い始めた子どもは、握るような持ち方をしています。
最も初歩的な持ち方ですね。
器用にまだ手先が動かせない幼児ならわかります。
「いただきます」
「ごちそうさま」
日本では、食事をいただく際と終える際、手を合わせる習慣があります。
箸を使ってご飯を食べるとき、箸先にご飯粒がつくことがあります。
これが気になり、箸先をなめたくなるときがありませんか。
なめたくなっても、そこでストップです。
器に口をつけたまま、箸を使ってかき込むように料理を食べていませんか。
勢いよく食べる人もいますね。
しかし、逆にそうしたずるずるいう音が不愉快だと感じる人がいるのも事実です。
大皿で出された料理の場合、一人一人が取っていきます。
特に中華料理の円卓テーブルでは、しばしば見られる光景ですね。
中国では「友好の証し」として解釈される文化があるためです。
食事をしていると、歯の間に詰まった食べかすが気になることがあります。
「むずむずして気になる!」
その気持ちはよくわかります。
大皿にいくつかの料理が盛り合わせになっている料理があります。
大皿に盛り付けられた揚げ物や刺し身は、代表的ですね。
みんなで一斉に取りたいところですが、ちょっと待ってください。
箸の使い方には、仏教の影響を受けているものが大半を占めています。
「素材の異なる箸を使ってはいけない」というタブーも、その1つです。
それくらいいいだろうと思うのですが、単純な話ではありません。
和食では、盆の上に並べられた料理を順に食べていきます。
食べるたびに器を手で持ち上げて食べるわけですが、この際、よく見かけるマナー違反があります。
箸を持ったまま、ほかの器を持とうとする光景です。
箸は使い方によっては、スプーンのように使えます。
2本の棒の幅を狭くして平行に固定すれば、スプーンのように料理を乗せることができるようになります。
こうすれば、箸でつかむより、一度に多くの食事を口に運べるようになるので、便利に感じます。
割り箸は、もともとつながっているものを割ってから使います。
この際、割ったときの木くずが残ってしまうことがあります。
木くずの状態によっては、鋭くて、食事をする際に、手元や口元をけがする可能性が出てくるのです。
食事をしているうちに、箸の2本の棒が、上下にずれてしまうことがあります。
箸の先がずれていると料理をつかみにくくなりますから、箸の先を揃えようとします。
このとき、口や器を使って箸先を揃えようとするのは、マナー違反です。
箸は2本の棒からできていますが、料理を切り分けるとき、1本ずつ箸を持って使う人がいます。
たとえば、豆腐のような柔らかい料理が出ると、箸を左右に1本ずつ持ち、一口サイズに切り分けるのです。
そのほか、天ぷらの衣を外したり、肉を切り分けたりするときにも、見かけることがあります。