通は、職人が握って台の上に置いた瞬間に取って食べ始めます。
3秒と待ちません。
それも素手で、一口です。
なぜそんなに急ぐように食べるのかというと、寿司のおいしさを存分に味わうためです。
なにより、寿司職人の技術の積み重ねに報いるためです。
同席者との会話が盛り上がり、出された握り寿司が暇をしていませんか。
食べ方は人それぞれで、ゆっくり食べるのもいいですが、出来上がった握り寿司を、そのままにしておくのは勧められません。
握り寿司は、握り始めた瞬間から乾燥と酸化が始まり、変色します。
時間が経つにつれて、ネタの鮮度が失われて、おいしさも半減します。
それを防ぐために、職人はさっと握っています。
さっと握る技術に、職人は何年も練習に練習を積み重ねているのです。
寿司職人になるには、10年かかるといわれます。
その手腕を発揮したとしても、客がなかなか食べてくれないのでは、意味がありません。
したがって、出来上がった握り寿司をそのままにしておくのはよくないのです。
職人の心意気に報いるように、出来上がったらすぐ食べるのがマナーです。
通のように3秒以内とはいきませんが、できるだけ早めに食べようという心がけが大切なのです。