「3倍働ければ、3倍の速さで成長できる!」
私は入社したての新人のころ、このように単純に考えていたときがありました。
3倍多く仕事できれば、それだけ多く経験ができ、身につく早さも3倍に速くなるものだということです。
たしかに3倍働ければ、3倍の速さで成長できるという計算どおりに、ある程度いい線まではいきます。
今になって考えると、半分は正しく、半分は間違っているということに気づきます。
ある一線を越えると、効率より、非効率のほうが大きくなり、仕事への対応がおろそかになってしまうのです。
人間はロボットではありませんから、長時間働けば、当然それだけ疲れます。
3倍働けば、たしかに3倍早く成長できますが、一方では3倍速く疲れることになるのです。
この疲れを取っていかないと、いずれショートしてしまうことになり、仕事のしすぎのために倒れることになります。
ストレスをため「鬱病」になったり、燃え尽き症候群になったりと、回復が難しい病に悩まされることになります。
私は以前、仕事を月に300時間もこなしている男性と出会ったことがあります。
たしかに多く仕事を経験しているだけあって、動きがよくて、知識もあり、仕事のできる人でした。
しかし、彼は仕事のしすぎのため、ついに倒れてしまい「潰瘍性大腸炎」という病気になってしまいました。
彼いわく、この病気は完治が難しく、場合によっては一生治らない場合もある、とのことです。
その大腸炎になってからは、仕事のペースがほかの人より速くても、人一倍疲れやすい体質になってしまいました。
「仕事を一生懸命しても、健康を失っては意味がないじゃないか!」
私は彼と出会ってから、考え方が大きく変わりました。
ただ一生懸命に働けばいいわけではなく、自分のペースを考えながら仕事をする必要があるのです。
私は入社して2年半の間は、一度も欠勤をしたことがありませんでした。
私にとって、これは自慢でした。
1日も休まないことは素晴らしい、と思っていたからです。
しかし、本当のことをいえば、体調が悪くても、無理をして会社に出勤していた状態でした。
彼の仕事のしすぎによって健康を失った姿を見て、体調不良のときには、思い切って体を休ませるようになりました。
体が一度壊れてしまってからでは、遅いのです。
ロボットは体の取り換えが可能ですが、自分の体は1つ。
取り換えはできません。
ただ働けばいいわけではない。
ただ仕事を多くすればいいわけでもない。
マラソンと同じように、こつこつマイペースが、実は一番速いのです。
本当に体調が悪いときには、棄権をする勇気も、大切なことなのです。