私が高校3年生のころ、同級生にO君という友人がいました。
O君は、顔中ににきびがたくさんありました。
ただ、あまり問題ではありませんでした。
人間は、慣れるものです。
初めはにきびの量に驚いたものの、毎日学校で顔を合わせていると、見慣れてくるものです。
見慣れてくると、にきびもにきびに見えなくなり、普通になります。
しかし、O君には変わった癖がありました。
私と話をするとき、顔を傾けるのです。
真正面に顔を向けるのではなく、顔を斜め15度くらい、横に向けます。
最初は何の意味だろうかと思っていたのですが、しばらくしてわかりました。
にきびを隠そうとしていたのです。
できるだけ顔を傾けて、目立ったにきびを見せないようにしていました。
日によってにきびの悪化具合が、右であったり左であったりするので、O君の傾き具合も、右を向いたり左に向いたりしていました。
私は、O君の顔のにきびより、彼の顔を傾けるしぐさのほうが気になって仕方ありませんでした。
にきびは見慣れますが、O君のきょろきょろするしぐさだけは慣れません。
目の前で顔をきょろきょろされると、どうも落ち着かないのです。
ひそかにO君が「隠そう」としているのがわかると、話をする私も複雑な心境になります。
にきびがあると、見られたくない気持ちが出てきます。
しかし、見られたくなくても、堂々としていればいいのです。
顔を傾けてにきびが隠れても、かえって顔を傾けるしぐさが目立ちます。