散歩の達人には、歩き仲間がいます。
運動好きの友人がいて、いつも同じ時間に歩くのが習慣になっているのもいいでしょう。
相手がいると「よし。もう少し先まで歩こうか」という気持ちが強くなります。
しかし、やはり一般的には「夫婦」で散歩をすることが多いはずです。
何しろ同じ屋根の下で暮らしていますから、比較的、生活リズムも合わせやすいことでしょう。
夫婦ですから、考え方も生活スタイルも似ている部分が多いはず。
夫婦だからこそ「一緒に歩こう」という気になりやすくなるでしょう。
私の両親も、夫婦で毎日散歩をしています。
朝の6時前には、2人とも自然に目が覚めます。
高齢なので、目覚まし時計なしで、結構早い時間に目が覚めます。
まだ外は薄暗い時間です。
目覚まし時計が鳴る前、ニワトリが鳴き始める前に、起きます。
さて、ここからがポイントです。
早く起きて何もすることがなければ、テレビを見たり、新聞を読んだりするだけでしょう。
幸い、水口家では雑種犬を1匹飼っています。
名前は「クッピー」です。
「早起きしたから、犬の散歩を兼ねて歩きに行こう」
父は母を誘い、もしくは母が父を誘い、雑種犬と一緒に散歩に出かけます。
ここに夫婦円満の秘密が隠されています。
「毎日誰かと歩く」ということは「毎日会話をする」ということです。
「毎日会話を交わす」ということは「日に日に仲が深まる」ということです。
散歩の習慣が、いつしかコミュニケーションの習慣になり、絆を深めたり意識合わせの時間になったりしています。
一定のコミュニケーション量をこなしているので、夫婦で考え方のすれ違いが発生しにくくなります。
なにより、そういうきっかけを作り出しているのは、意外にも自宅で飼っている「1匹の犬」です。
私はそのとき、はっとしました。
それまでは両親の仲がいいのは、てっきり相性が初めからよかったからだと思っていました。
もちろんそういう面もあるのでしょう。
しかし、実は意外にも、自宅で飼っている犬が、夫婦円満に一役買っていると気づきました。
神様は、姿形を変えて、私たちの生活の至る所に存在すると言います。
自宅で飼っている犬こそ、夫婦円満の神様に思えてきます。
ペットの犬がいるからこそ、毎日の散歩という用事が生まれ、夫婦で会話する機会が生まれ、円満につながっています。
クッピーに話しかけました。
「神様、ありがとう」と。
すると「ばれたか」と言わんばかりの表情で、しっぽを左右に大きく振っていたのでした。