私が受験時代、勉強をする動機は「田舎から離れたい、都会に住みたい」という気持ちでした。
本来、受験勉強を始めるにあたって最もよい方法は「夢を定めること」です。
夢がわかっていれば、進学すべき大学がわかり、必要な勉強の範囲もはっきりします。
これほど勉強がやりやすくなる方法はありません。
それは高校生の私も、十分わかっている方法でした。
しかし、です。
まだ10代の若い時期です。
将来像を描きたい気持ちはあっても、描きにくい環境でした。
私の実家は愛媛の田舎です。
家の近くには、自販機・コンビニ・道路に信号機すらないところです。
家の前に道路はありますが、車が全然通りません。
通るのは車ではなく、畑を耕す機械や脱穀機ばかりです。
生まれ育った田舎という環境が、未来の自分像を膨らませることを防いでいたのかもしれません。
刺激や情報が少ない場所は、イメージも膨らみにくい。
周りに畑しかない田舎にいた私が描いた将来像は「くわを持って畑を耕しているところ」でした。
家が兼業農家だったので、何かを想像するときにいつも「くわ」や「畑」が必ず登場します。
もちろんそういう仕事をしたくて、農業という夢に進むならいいでしょう。
しかし、そういう物しか見ていないと、そういう将来像しか描けません。
刺激の少ない環境にいると、何か自分の若い活力を制限してしまうような気がしました。
テレビを見ては、都会に憧れていました。
大都会のネオンや立ち並ぶビル街を見て「何でもありそうだな。ああいうところに住んでみたいな」と思いました。
雑誌に登場するおしゃれな人たちを見て「かわいい子ばかりじゃないか」と思いました。
10代後半は、都会に強く憧れを抱く時期です。
そんなときです。
私は、ぱっと思いつきました。
具体的な将来像が、脳裏に飛び込んできました。
「都会の大学にさえ合格すれば、田舎を脱出でき、都会に進出できる」
急に明るい未来が見えました。
若い時期は刺激を求めたがります。
一方で「親から離れたい」という気持ちも強くなる時期です。
「大学に合格すれば、都会生活も親は反対できないだろう」
「とりあえず具体的な将来の職業は、都会の大学に進んでから決めよう」
「都会で生活をしていれば、何か別の選択肢が見つかるはずだ」
「親から離れて、一人暮らしをしたい。自立したい」
こうしたさまざまな願いを、一度に叶えられる方法でした。
私は急に元気になりました。
とりあえず夢らしき夢を見つけました。
同時に、勉強への強い動機になりました。
将来の職業がまだ定めることが難しかった私は、田舎を脱出するために猛烈に勉強し始めたのでした。
徹底的に勉強をするようになり、親も驚いたようです。
高校1年の冬のころでした。