英語の世界的試験「TOEIC(トーイック)」は、あなたもご存じのことでしょう。
10点から990点までの範囲でスコアを表示し、受験者の英語の実力を正確に表現できる試験です。
就職試験の際も「TOEICのスコアが高いほうが有利」と言われます。
事実、社会人である私から見ても、TOEICのスコアが高いほうが、たしかに有利になると感じます。
さて、ここで問題です。
これも数字のトリックの1つです。
「T0EICスコア900点の人」と「T0EICスコア300点の人」がいます。
どちらが、仕事ができる人でしょうか。
おそらくあなたは、T0EICスコア900点を選んだのではないでしょうか。
正解は「わからない」です。
引っかけ問題のようで、申し訳ございません。
私も最初、この問題に引っかかった1人です。
T0EICスコア900点は英語の実力であって、仕事がどのくらいできるかどうかを評価するテストではありません。
正解は「わからない」になります。
この事実を裏付ける、ある出来事がありました。
私が社会人になった、ある日のことです。
職場に、T0EICスコア800点台の社員が入ってきました。
800点というと結構な実力です。
「TOEIC800点もあるのだから、きっと仕事もできる人に違いない」
私もほかの社員も、そう思っていました。
TOEICの数字だけを見て、判断してしまいました。
しかし、現実を見て驚きました。
彼は、英語はできるけれど、仕事はできない人だったのです。
朝出社をするや否や、居眠りをし始めます。
会議に出席しても、発言はおろか、まず居眠りをします。
仕事をお願いしても期日を守れず、間違いも多いです。
そんなある日、仕事上で大きな失敗をしてしまい、問題になったことがありました。
彼は自分から責任を取って、仕事を辞めてしまいました。
すべて実話です。
私はこの経験を通して、英語ができるからとはいえ仕事ができるとは限らないという当たり前の事実に気づきました。
TOEIC900点あっても、まったく英語を必要としない職場なら、生かされませんね。
TOEIC900点でも、生かせる職場と、そうでない職場があります。
たとえ英語が流暢でも、仕事がまったくできなければ、0点です。
現実では、TOEICの結果ではなく、仕事の結果で、評価されます。
現実は、そうです。
仕事に自信があっても英語に自信がなければ、通訳を通して仕事の中身で表現します。
それで、十分通用している現実があります。
日本のある会社の社長が、アメリカのある会社の社長と話し合うとき、どうしているでしょうか。
多少英語のできる社長でも、通訳を通して会話しているはずです。
たとえ、少々語学に自信がある社長だとしても、一言の間違いが大きな利益損失につながるため、英語ができても専門家に任せます。
仕事のできる大統領は、語学に堪能でしょうか。
いいえ、ほかの国の大統領と話し合うとき、現実では通訳を通して話をします。
たとえ、語学が得意でも、語学は語学の専門に任せ、通訳にお願いしています。
大統領は、対談そのものに集中するはずです。
それが、仕事ができる人の行動です。
仕事ができる人ほど「仕事の中身」に集中します。
英語は1つの評価になりますが、英語ができるからとはいえ仕事に直結するわけではありません。
英語力が直結する仕事は、通訳家と翻訳家くらいです。
日本ではコンビニで働く外国人を見かけますが、日本語が話せるからとはいえ、それだけで高く評価されているでしょうか。
語学はできて、当たり前と思います。
語学ができるだけで、店長や社長になれるという現実はありません。
しかし、語学はできなくても、仕事ができれば、店長や社長になれるという現実はあります。
英語力は1つのバロメーターにはなりますが、仕事がどのくらいできるのかを正確に表現はできません。
「語学ができるか、できないか」より「仕事ができるか、できないか」です。
仕事ができれば、語学に少々自信がなくても、必ず昇進できます。
大手の英会話学校、各種英語関係では、やたらTOEICの高得点を強調します。
TOEICのスコアが上がれば、年収も地位も上がり、夫婦円満、幸せになれ、すべてがうまくいくかのように思わせます。
たくさんの人たちに英語を勉強させるように仕向け、英語教材の売り上げを伸ばそうとしています。
TOEICの数字が、すべてを表現しているわけではない現実に気づくことです。