人間は、生きた年齢に比例して、物事を見極める力をつけていきます。
「1を知れば、10を知る」ということわざもあるように、経験を積んだ人には、ずっと先のことまで見えてしまう力があるのです。
俗に言う、千里眼です。
超能力者とまではいきませんが、経験を積んだ人なら誰でもある程度、自然とわかるようになります。
買い物での失敗なんて、良い例です。
「安いから勢いで買ってしまったら、安いだけあってすぐ壊れてしまった」なんて経験があるのは、私だけではないはずです。
小さな経験でも、積み重なれば、正確に予想する力が備わってきます。
私はよく母と買い物に行きますが、母の買い物をするときの千里眼にはいつも驚かされます。
「それは柔らかすぎるからおいしくない。こっちのほうが長持ちする。これはまだ熟していない。あと6日くらいで食べられる」
そう言います。
しかし、騒いでいることも、あながち間違ってはいないのです。
母が説明するうんちくは、かなり鋭い視点からの分析ができていて、私はいつも「なるほどな」と納得させられます。
母は最初から物事を見抜く力があったわけではなく、失敗経験から見えなかったことが見えてくるようになっただけです。
つまり、買い物での経験が多いのです。
ある日、また一緒に買い物へ出かけたときのことです。
母はある商品を選んだとき、店員にこう言われていました。
「こういうものを選ばれたなんて、お目が高い」
きっと店員のお世辞ではあったと思うのですが、母は照れていました。
やはり褒められると、母も嬉しいようです。
母の千里眼は、店員さんにもわかったのです。