子どもとくっつきすぎている親を「過保護」と呼びます。
子どもと離れすぎている親を「放任」と言います。
子どもを自立させる親は、くっつきすぎず離れすぎず、うまい具合に子どもとの距離を保っています。
「つかず離れず」の距離です。
べったりくっつきすぎても居心地が悪いし、だからとはいえ離れすぎていても悲しくなります。
お互いが最も心地よい距離を確保できることが、お互いにとって一番理想的です。
これを心理学では「ヤマアラシ・ジレンマ」と言います。
ヤマアラシは、寒い冬の中、体温を逃がさないために体同士を寄せ合います。
しかし、体を寄せ合うと、お互いのとげが刺さって、傷つけ合うことになります。
とげが刺さらず、なおかつ体温を逃がさないためのちょうどよい距離が、一番理想的な「つかず離れず」の距離です。
このつかず離れずの距離を、子育てにもうまく活用してみましょう。
子どもと親との距離は、難しい定義と思われがちですが、簡単に見つける方法があります。
さっきのヤマアラシと同じように、まず近づきすぎてみましょう。
思春期の子どもなら、すぐ嫌な顔をします。
そうしたら、少し離れて見るのです。
実際の人と人同士の距離ではありません。
「心と心の距離」です。
離れすぎていると感じれば、心が冷たく感じます。
そのときに、再び少し近づいてみるのです。
そうすることで、だんだんお互いの理想的な距離がつかめてきます。
特に子どもを自立させるためには、この距離がキーポイントです。
今は亡き、長谷川町子の有名な漫画『サザエさん』では、1つ屋根の下で、お互いの距離をうまく取っています。
『サザエさん』の家族は、お互い同士がちょうどよい距離を取っているのです。
いつもカツオはテストで悪い点を取って、サザエさんに叱られます。
それでも、サザエさんの目を盗んで、野球をするためにこっそり家を抜け出そうとします。
そんなときに「待ちなさい」とサザエさんにいつも見つかる、という話の流れがあります。
カツオが何とか野球をするために家を抜け出そうとする姿は、自立しようとする姿です。
カツオは何だかんだ叱られても、それでもやりたいこと(野球)のために一生懸命抜け出そうとします。
しかし、しっかりカツオは家に帰ってきます。
テストで悪い点を取って、ワカメちゃんには笑われ、お父さんにも叱られます。
カツオは叱られることがわかっていても、しっかり帰ってくるのは、やはり家族の輪の中が一番居心地いいからです。
「つかず離れず」の距離でお互いが温め合い、1つの輪を構成しているのが「家族」です。
漫画『サザエさん』では、そんな理想的な家族を描いている手本だったのです。