自分が一番よく知っているのは、自分についてです。
自分の立場は過大評価しやすく、相手の立場を過小評価しやすくなる傾向があります。
自分が忙しくて大変なときほど、その傾向は強くなります。
自分に集中が向いているため、自分の努力はよく感じられますが、一方で周りに気を配る余裕がなく、周りが見えなくなります。
そのとき、自分と他人とに溝が生まれます。
たとえば、夫と妻とでは、感じる大変さにずれが生じることがしばしばです。
夫は、会社で仕事をしていて、上司に怒鳴られたり、部下の面倒を見たりなど、多忙な毎日を送っています。
肉体労働であろうと、知的な労働であろうと、苦労があることに変わりありません。
また家族を養っていかなければならないという責任から、逃げようがなく、上司からの命令にも逆らえません。
ストレスもたまることでしょう。
自分がやっていることに比べれば、妻がしていることはとても楽だと思います。
一方、妻は妻で大変だと感じます。
朝早くに起きて、家族のために食事を作る。
広い部屋の掃除、山のようにある洗濯物。
特に大変なのは、育児です。
手足がまだしっかりしていないので、つまずいて転んだり、場合によっては大けがをしたりすることもあるでしょう。
壁に落書きや、いたずらばかりをする子どもに手間がかかります。
動きが読めない子どもからは目が離せません。
何かトラブルを引き起こすのではないかと、落ち着く暇もないことでしょう。
ご近所付き合いや2世帯住宅の場合は、しゅうとめとの関係もあり、神経を消耗します。
夫が会社から帰れば、次は夫の料理の支度です。
1日を通して、まったく気の休まる暇がありません。
妻は自分がしていることに比べれば、夫は会社で仕事をするだけでいいのだから羨ましい、と思います。
お互いが「自分のほうが大変だ。それに比べて相手は楽だ」と思ってしまいます。
それがきっかけで、夫婦仲に亀裂が入ります。
「自分のほうが大変だ。あなたのほうが楽だ」
価値観がずれてしまいます。
あなたの家庭ではどうでしょうか。
ほとんどの場合「自分のほうが大変だ」と思っている。
それはそう思い込んでいるだけです。
「仕事の量」で比べるのではありません。
「仕事の質」です。
夫には男性だからこそできる仕事の質があり、大変さがあります。
妻には女性だからこそできる仕事の質があり、苦労があります。
お互いが大変であることを、理解し合うというのが大変です。
いま一度、視野を広げ「あなたのほうが楽をしている」と非難するのではありません。
「お互い大変だね」と思い合うほうがいいのです。