書き始めのころは「できるだけかっこよく見える文章を書いてやろう」と意気込んでしまいがちです。
それはまず、漢字に現れます。
たくさんの漢字を使ってしまい「どうだ、俺はこんなに漢字を知っているんだぞ。すごいだろ」と、見せつける文章になっています。
たしかに漢字を使うと、いかにも難しそうでかっこいい文章に見えてしまいがちですが、その代わり読みにくい文章になります。
読み手には、読みやすい文章が好まれます。
読み手には、漢字がたくさんあってかっこいい文章でも、読みにくければ「ありがた迷惑」です。
逆に漢字を使わないことで、文章が読みやすくなります。
十返舎一九の代表作『東海道中膝栗毛』は、それまでの文語体のお堅い文章とは違い、口語体で書かれています。
口語体のほうが、庶民には親しみが持て、読みやすかったのです。
その結果、たくさんの人に読まれることとなったのです。
漢字ばかりで書いた学術書のほうが、しっかりした内容の文章ではあります。
しかし、読者が「漢字ばっかりで難しそうだな。読むのが面倒」と言えば、それまでなのです。