私が学生のころ、マーティン・ルーサー・キング氏の演説を、映像で見たことがあります。
アメリカの牧師・黒人解放運動家であり、ノーベル賞も受賞した歴史上の偉人です。
昔のフィルムのため、モノクロで映像は乱れていました。
私はまだ英語が理解できず、演説の内容もちんぷんかんぷんでした。
しかし、言葉はわからなくても、彼の演説を見ているだけで、大きな自信を持って発言していることだけはよく伝わりました。
自信を表現するために、言葉は必要ないということです。
言葉はわからなくても、国や時代を超えて、雰囲気だけでメッセージが伝わるというのはすごいことです。
なぜ自信があるように感じるのだろうかと考えたとき、気づきました。
絶対に下を向きません。
常に前を向き、顔は少し上向きになっています。
堂々とした態度であり、その態度が自信あふれる様子に見えてしまいます。
大物は、どんなことがあっても下を向きません。
原稿を見ながらスピーチなどという子ども騙しの演説は、絶対にしません。
日本の政治家の演説が、なぜ自信がなさそうに見えるのかというと、下を向いて話をするからです。
手元にはあらかじめ演説する内容を書いた原稿があり、見るためにちらちら下を向きます。
原稿を見るために下を向くのは、ほんの一瞬です。
しかし、一瞬でも下を向いたらダメです。
見ている人は、下を向いた人に悪い印象しか抱きません。
「原稿を見ながら話をしている」
「下書きがないと話ができない程度の内容なのか」
「下を向いて自信がなさそうだ」
これは自信がないように見える原因です。
間違った発言はしてはいけないと思い、原稿を見ながら発言したくなる気持ちはわかります。
しかし、本当に自信のある発言なら、原稿は必要ないはずです。
原稿を見ながら話をしたら、視聴者に自信を表現するのは難しいのです。