公共の場で堂々とお化粧をしている女性を、ときおり見かけることがあります。
お化粧をするのは悪くはないのですが、問題なのは「場所」です。
たくさんの人がいる公共の場でするお化粧は「大道芸」さながらです。
「すごいな」と思わせるパフォーマンスを見ている気分になります。
恥ずかしさを感じることなく堂々としているところが、プロのように見えてきます。
大道芸人が観客からの注目の中で行う芸は、公共の場でお化粧をしている姿とさほど変わりありません。
たくさんの人の前で、面白いことを恥ずかしがらずに、堂々としています。
たとえば、電車の中で堂々とお化粧をする人です。
私は朝、満員電車に乗ることがありますが、まったく身動きが取れないほど満員のときがあります。
それは押しつぶされてしまいそうな満員電車です。
そんな中で、ファンデーションや口紅を塗り、マスカラでまつげを上げて化粧をしている人がいます。
私はどうしても、パフォーマンスに見えてしまい、朝から笑いそうになります。
それも女性です。
「家でゆっくりすればいいことを、何もこんな一番やりにくいところでしなくても……」
スッピンを見せたがらない女性が、たくさんの人の前でお化粧ができる不自然さも考慮すると、笑いをこらえるのに必死になります。
「言っていることと、やっていることが違うよ」
これはもはや、みんなを笑わせるためにわざとやっているようにしか見えません。
大道芸が観客を笑わせるように、公共の場でのお化粧も見えている人を笑わせます。
塗りたくっている本人は、一生懸命であり、真剣な表情です。
それでいて、恥ずかしいことをしていることに気づいていません。
それも笑えてしまうのです。
パフォーマンスが終われば、私は投げ銭をしたくなるのでした。