ある日、私の職場にベテランの新人が入ってきました。
ほかの人より年上で、話をしていると仕事ができるというのがすぐわかります。
実際に仕事をさせてみると、たしかにほかの人より仕事ができます。
ほかの人の知らないことまで知っていて、経験を積んでいるというのが強く感じられました。
しかし、1つ残念なことがありました。
彼は入ってきたばかりなのですから、職場では「新人」という扱いです。
職場には職場のルールがあります。
ベテランの新人でも、入ってきたばかりのときには謙虚な姿勢になって仕事を覚えないといけません。
にもかかわらず、話し方が偉そうなのです。
「このやり方ではダメです」
「この方法だと効率が悪いです」
「前の会社ではこういうふうにしていました」
「こういうふうにするべきです」
職場に長くいる上司が、それを言うなら、まだわかります。
しかし、いくらベテランとはいえ、入ってきたばかりの新人です。
そういう言葉を発するので、たちまち職場の人から壁ができてしまいました。
偉そうな態度では、こちらも感情的になり、親切に教えようという気がなくなります。
親切に教えようという気がなくなれば、その人に話しかける回数が少なくなり、情報が入りにくくなります。
悪夢は訪れます。
そのベテランの新人が、ある日、仕事で大きな失敗をしてしまいました。
自分の運転を過信したドライバーが、交通事故を起こしてしまうことと同じです。
能力が高すぎるがゆえに、周りの情報や忠告を無視して、起こったミスです。
報告書を提出して、対策会議を開かなければならないほどの失敗となりました。
自分の能力に自信があるとはいえ、転職や異動などで新しい職場に就けば、その職場の中では新人です。
新人らしく振る舞うことが大切です。
「侮辱されたくない。すごいと思われたい」という気持ちがあるのはわかります。
しかし、新しい職場ではむしろ障害になります。
謙虚な姿勢になってこそ「教えてあげよう」という気になり、ほかの人からの情報や忠告が入ってくるようになります。
成長は、謙虚な姿勢になってこそ、できるのです。