私があるとき、食事をしていたときのことです。
そこは座敷形式で、靴を脱いであがるタイプのところでした。
料亭のような、堅苦しい雰囲気のところです。
そこに、やかましく騒ぐ子どもをつれた親子がやってきました。
おごそかな雰囲気の中では、子どもたちの声は特に響き渡ります。
「きちんと親が子どもたちをなだめてくれればいいのだが」
私は自分の食事をよそに、子どもたちを心配していました。
ところがそんな子どもたちの行動を気にしていた私に、驚きの光景が飛び込みます。
はしゃいでいる子どもが靴を脱いだとき、きちんと自分の靴を揃えて、帰り際に履きやすいように向きを整えたのです。
さらに、ほかの人の靴まで揃えました。
その光景を目にして「素晴らしい」と思ったものです。
普段は騒いでいる子どもたちが、一瞬にして「育ちのいい子ども」という印象に変わってしまいました。
靴は誰もが見落としがちなところですが、そんなちょっとしたところにマナーがあると、育ちのよさを感じます。
「実はしっかりしているんだな」と好印象が強く残ります。
自分が脱いだ靴を、お店の人に任せていませんか。
「お店の人がしてくれるから大丈夫」と人任せにしていませんか。
自分のことを自分で行うことは、基本中の基本です。
お客という立場になると、つい偉そうになります。
しかし、お客でいながらもマナーをしっかり守っていると、お店の人への印象もよくなります。
マナーのきちんとしている人に、お店の人は優しくなり、サービスもよくなります。
自分で自分の靴を揃えることには、大きな意味があるのです。