中学生のころ、なお君という友人がいました。
色白のなお君はとても勉強のできる人でしたが、初めて彼を見る人にも「頭よさそうね」とよく言われていました。
なお君の成績を知るわけがないし、話したこともない人から「頭がよさそう」と言われるのは不思議なことです。
実際、なお君には頭がよさそうな雰囲気が出ていました。
知的なオーラです。
それはどのようなところか。
「背筋」です。
なお君には、いつも背筋がぴんと伸びているという特徴がありました。
姿勢がいつもよくて、背中に棒が入っているようです。
歩くときや、椅子に座っているときも、背筋はいつも伸びています。
その姿勢から頭がよさそうに見られていました。
姿勢だけで、その人の中身がすべてわかるわけではありません。
しかし、姿勢から気持ち、元気、やる気といった精神状態が、メッセージとして伝わってくるのです。
背筋は、精神状態の表れです。
実際に気持ちが緩んでやる気がなくても、背筋だけは伸ばしておくことです。
気持ちが引き締まってから、背筋を伸ばすのではありません。
気持ちが緩んでいても、無理をして背筋を伸ばすのです。
背筋が伸びるから、自然と気持ちが引き締まり、元気が出てきます。
私は昔、父から「貴博、背中が曲がっているぞ!」とよく叱られていました。
「なぜ背中が曲がっているだけで叱られるのか」と、そのときは理解できませんでした。
しかし、社会に出ると、姿勢は大切であることに気づきます。
背中が曲がっていると、自信がないように映り、気持ちが緩んでいる姿に映ります。
実際は、自信があって気持ちが引き締まっていても、背筋が曲がっていてはすべてが台無しになるのです。
背筋は、社会的信用にまで影響を及ぼしてしまいます。
背筋が伸びていると頭がよさそうに見え、知的な印象をアピールできるのです。
父はそれを知っていたからこそ、昔から口うるさく子どもをしつけていたのだと、大人になってようやくわかったのでした。