いく人ものご老人と接するとき、ふと気づくことがあります。
体力低下や筋力低下は少しずつ始まりますが、あるとき、一気に低下する時期があります。
あっという間です。
ついこの前まで、元気に歩いていた人が、数年後にお会いすると、別人になったかのように弱りきっていることもしばしばです。
「なぜ、老いるときには、あっという間に老いるのだろうか」
ふと、思います。
長く生きているわけではありませんが、私の身内、親族、知人など、そういう特徴に気づかざるを得ません。
これは、ある悪循環が関係していると思われます。
まず、若いうちは体力や筋力がありますから、スポーツを楽しんだりして、体力や筋力を維持できます。
元気だからスポーツをする。
スポーツをするから、体力や筋力が強化され、またスポーツに励む。
こういう健康を維持しやすい好循環があります。
しかし、人間は時間が経てば、必ず年を取ります。
年を取ると、体力や筋力は、次第に衰えてきます。
しかし、この「老いる」という状況を、過大に考えてしまいすぎる傾向があります。
「体に無理をさせないように」と思い、一転して体を動かさない方向へと考えてしまいがちです。
単に無理をしない範囲で運動を楽しめばいいのに「するか、しないか」という白黒で考えてしまう。
そういう本人の意識に加え、周囲の人からのアドバイスも影響があるのでしょう。
たとえば、医者や家族から「無理はなさらないようにしてください」とアドバイスします。
もちろんご本人のことを思ってのことです。
しかし「無理をしないように」というアドバイスと「あまり運動しないように」を誤解して受け止めてしまう傾向がある。
弱りつつある自分を悟り、余計にそういうふうに考えてしまうのかもしれません。
「たしかにそうだな。もう無理はしないようにしよう」
このように悪化の一途をたどり、だんだん衰えます。
「動かない→筋力が衰える→さらに動かなくなる→さらに衰える」
まさに悪循環。
そうしたときに、転んで、けがをしてしまいます。
入院でしばらくの間、寝たきりになり、一気に下降線をたどります。
ただでさえ弱っている体が、もう日に日に動かなくなるほどです。
健康を維持するのは、簡単なようで難しい。
ことの始まりは「無理をしないようにしよう」と思い始めたことです。
どこかで、この悪循環を断ち切ることが必要です。
それが、老若男女、誰でもできる「ウォーキング」だと考えています。