不況には「コスト削減」という話が必ず出てきます。
経済が傾く噂を耳にすると、社員大勢が集まり、会議を開きます。
「そろそろコスト削減が必要かな」という話が、ちらほら出始めます。
不況が始まれば、また会議を開いて「どこか削れる部分はないか」とようやく重い腰を上げます。
みんな、あまり変化をしたくないし、痛みを感じたくない。
お互いの顔色をうかがいながら、無難な改善案を挙げます。
しかし、不況は進みます。
さらに不況が進むようならば「もっと削ろう、さらに削ろう」とまた会議を開きます。
その間に、小さな改善が繰り返され、小さな痛みを味わうことになりますが、なかなか立ち直るまでにはいかない。
ついに不況が深刻になったとき、腹を決めます。
「このままではいけない。改革を起こそう」
大胆で新しいやり方を決意します。
「それは無理だろう」という意見が出ますが、不況だからという理由で仕方なく進めます。
「数回の改善の後、最後に改革」という流れです。
自然な流れですが、ちょっと待ってください。
段階を踏んで、少しずつコストを下げていくのは、実は一番効率の悪い方法です。
実は一番痛みが大きいパターンであり、最も効果の小さなパターンです。
「小さな痛みを数回した後、激痛」という流れは、合計すると一番痛みを長く強く感じてしまう。
しかも不況の段階に合わせて、少しずつ進めるコストカットは、効果も小さい。
時間もかかり、遅いです。
いい改善案が出ても、実施が遅ければ、効果も小さくなります。
もたもた始める改善は、思ったほど不況対策にはなりません。
では、不況に強くなるためにはどうするか。
不況が近づいているとわかった段階で、いきなり大きなコスト削減に踏み切ります。
初めから「改善」ではなく、いきなり「改革」から始めます。
開く会議も、会議は必要最低限に抑えます。
コスト削減の目標も、5パーセントや10パーセントではなく、いきなり50パーセントでいきます。
100万円かかるものを、50万円でできないか、という発想です。
頭のねじが1つ飛ぶくらいではいけない。
ねじが2つも3つも飛んだやり方のほうが、痛みは大きいですが、一度で済みます。
これまでのやり方を大胆に変えようという発想、それを実行しようとする行動力が出てきます。
根本的にシステムを見直す必要が出てきて、これが生き残る力になります。
大胆な決断は大きな痛みが伴いますが、痛いのは最初だけであり、一度だけです。
何度も小さな痛みを繰り返す「改善」より、一度の大きな痛みで済ませる「改革」のほうが、実は総合的な痛みが小さいのです。