私たちは、戦後、3段階の時代を経験しています。
物が不足していた第2次世界大戦後は「とにかく物を求める時代」でした。
物がなくて、生きるために必死の時代です。
戦後の日本は、物がないので「物を持ちたい」という単純な動機で、仕事に精を出しました。
できるだけたくさんの物を所持していることが、豊かさの象徴でした。
テレビ・洗濯機・冷蔵庫があるだけで、周りの人から「経済的に豊かな人」と思われていました。
しかし、日本では1955年から高度経済成長を迎え、次のステップに向かいます。
「性能を求める時代」です。
日本は高度経済成長を経験して、以前の目標であった「テレビ・洗濯機・電気冷蔵庫」を、誰もが持つ時代になりました。
むしろ持っていないほうが、不思議がられていました。
基本的な物は揃ったので、次に「高性能」を求めるようになりました。
生活の豊かさは、物の品質によって決まる時代でした。
テレビは、モノクロからカラーになりました。
洗濯機は、全自動になりました。
電気冷蔵庫は、冷凍庫の機能まで持つようになりました。
そのほかの物品も、性能を求めている時代でした。
しかし、です。
21世紀を迎えた今、さらに次のステップに移りました。
それが「体験を求める時代」です。
すでに十分な性能の道具を、誰もが持つ時代になりました。
高性能の物があふれた時代です。
性能では、差がつきにくくなりました。
現在、市場で出回っている物に性能の大差はありません。
では、性能以外の何で差をつけるのかというと「体験」です。
私たちは今、大きな変容の時期に生きています。
物があふれる時代になった今、物の性能だけで善しあしをアピールするのは難しくなってきています。
これからは、物を持つことで、どんな体験ができるかをアピールする時代です。
ライフスタイルが、より重要です。
たとえば、デジタルカメラの販売では「1000万画素」という性能表示をお客さまにアピールするのは、難しくなっています。
「1000万画素」と性能表示を見ても「だから何? どのカメラでも十分にきれいに撮れるではないか」と思っています。
「どのカメラでも十分きれいに撮れる」と言われると、たしかにそのとおりです。
しかし「お孫さんの笑顔が一番きれいに撮れるカメラです」と説明があると「かわいい孫の笑顔が残せるなら買おう」と思います。
物を持つことで、購入者の生活がどう変わるのかをアピールすることです。
今「性能」ではなく「体験」で勝負する時代なのです。