「円周率πは、3.05より大きいことを証明せよ」
2003年度、日本最高学府である東京大学の入試で出題された数学問題です。
東京大学の数学問題では、数学の教師でも苦しむような問題が出題されることで有名です。
1行のシンプルな問題文です。
しかし、シンプルだからこそ、難問です。
私たちは、当たり前のことほど考えることがありません。
空気はなぜ目に見えないのかという当たり前の事実は、普段考えることはありません。
「円周率とは3.14」と当たり前のように覚えていた人には、度肝を抜かれる問題です。
「なぜ円周率は、3.14なのか」と考えたことがない人が、ほとんどです。
まさに、自分で考える力があるかどうかを試そうとする、絶好の良問です。
普段からわからないことがあれば、すぐ人に聞く習慣のある人は、ここで詰まります。
わからないことがあったとき、すぐ答えを見る勉強法をしてきた人は、考える力がないからです。
考える力がないので、何をどうすればいいのか見当もつきません。
途方に暮れます。
しかし、普段から「なぜ、どうすれば」を考えながら数学問題に取り組む人は、何らかの糸口が見えてくるはずです。
「そもそも円周率とはなんなのか」
「円を証明するにはどうすればいいのか」
「こうすれば証明できるのでは」
さまざまな角度から考察して、円周率が3.05より大きいことを証明しようとします。
「円とは何か」という原点に返って、あらためて考え直す必要があります。
プロフェッショナルに要求されるのは「考える力」です。
さまざまな角度から見て、希望の光を探します。
もちろんどんな人でも、考える限界があるのもたしかです。
一生懸命に考えて、わからないときには、答えを見てもいいでしょう。
そのときも、回答を見て終わりにするのではありません。
深く納得するまで何度も読み返し、体と頭に染み込ませます。
まず、自分で考える習慣を持つことです。
人生では、難問ばかりです。
数学の問題では、あらかじめ正解が用意されています。
しかし、社会では正解が用意されていない難問ばかりです。
受験勉強が難しいのは、社会で必要な「考える力」を身につけさせるためです。
難しく大変だと言われている受験勉強は、無駄ではありません。
社会で通用するような、考える力を身につけ、状況に応じた難問を解いていけるような準備を、受験時代からしているのです。