昔々あるところに、50代の中年男性がいました。
彼には20代の一人娘がいました。
娘が結婚することになったので、彼は結婚式で何か面白い余興を披露しようと考えました。
父の意外な一面を見せて驚かせてやろうと思い、いろいろアイデアを巡らせます。
そこで思い立ったのは「ピアノ演奏」です。
結婚式でピアノ演奏を披露すれば、娘は驚いて感動するに違いないと思いました。
さっそく彼はピアノスクールに入会して、仕事帰りに立ち寄るようになりました。
自宅の近所ではばれるかもしれないので、自宅からちょっと離れたスクールを選びました。
帰りが遅くなることもありましたが、こつこつ練習を続けていきました。
「50の手習い」とはまさにこのことです。
選んだ曲は、パッヘルベルの名曲『カノン』です。
練習すれば初心者でも演奏できる感動のメロディーです。
誰でも知っているクラシックの名曲でもあります。
初心者でしたが、先生とマンツーマンだったこともあり、スムーズにレッスンが進んで短期間で上達しました。
いよいよ結婚式当日です。
大勢の前で演奏するのは緊張しましたが、見事ピアノ演奏が成功して、娘さんに喜んでもらえました。
たどたどしい弾き方でしたが、それがまた良い味を出していて、感動を誘いました。
娘さんだけでなく、式場にいる全員から盛大な拍手を受けました。
すべての人が幸せになった瞬間です。
さて、面白いのはここからです。
結婚式でのピアノ発表がうまくいったので、そこでやめるかと思いきや、やめませんでした。
ピアノの楽しさに目覚めたのです。
「ピアノ演奏はこんなに気持ちがいいものなのか!」
大成功を収めたことで、すっかり味を占めてしまいました。
自分の指で音楽を奏でるのは心地よい。
ピアノは、癒やしにもリフレッシュにもストレス解消にもなります。
演奏すれば、必ず誰かに喜んでもらえます。
音楽といえば、今までずっと聞く側でしたが、初めて演奏する側になりました。
娘さんの結婚式が終わった後も、引き続きピアノスクールに通い続け、ピアノが趣味になったのです。
ピアノに難しいイメージを持っていましたが、思い込みでした。
いざピアノを始めてみると、カノンのように初心者でも演奏できるメロディーがたくさんあることを知ります。
世の中、何かきっかけで趣味になるかわからないものです。
思い立ったらさっそく取り組んでみましょう。
難しいイメージは思い込みかもしれません。
いざ初めてみると、そこには新しい世界が広がっているのです。